湘南Luv 2024
湘南Luv 2024

湘南POWPOW ONLINE

SHONAN CULTURE WEBMAGAZINE

Live Report 湘南Luv 2023 藤沢駅南口BLOCK PARTY

とうとうこの日に辿り着いた。その道のりは単に延期となった8月13日からの3ヶ月だけではない。

コロナ禍に突入し開催を断念した2020年の9月から、主催者メンバーはずっと再開の形を模索して来た。

人知れずZOOMで会議を続け、地道な努力で構築したこのWEBマガジン「湘南POW POW online」。その公開のタイミングで藤沢善行Zからオンラインで中継した「湘南LUV 2021」。そして緻密にLINEでスケジュールを調整し、忙しい20人からのメンバーが炭火焼壱番に集まって繰り返したミーティング。それらの試行錯誤の全てが、今年2023年に湘南LUVを再開するための下ごしらえであった。

そして迎えようとした本番の日、8月13日は、無情にも台風7号によってリスケジュールを余儀なくされてしまった。「夏、海、レゲエ、湘南」を体現出来る素晴らしい内容になるはずだったのだが、無念であった。

そこからの3ヶ月である。その3年前からストーリーは始まっていたのだ。それが今夜完結する。

17:00。まずはBUZZからスタートだ。

BUZZは17:00から5:00までという12時間営業で今夜のパーティーの軸となるサウンド・バーだ。昨年オープンし、小バコながら今では藤沢のDJパーティーの中心地となっている。ここでの早い時間帯は、湘南が世界に誇るダンスホール・クィーンBATTY BOMBOMプレゼンツのキッズ・ダンスのショーケースと、みんなで踊るダンス・レクチャーが企画されているのだ。

一番星クルーのLINDAMANの軽いウォーム・アップのセレクションに続いてチビッコたちの登場。BOMBOM先生のところの「ちびちびボンボン」と、Jr.Deeの奥さんのアズちゃん率いる「FRESH JUICE」が登場。「FRESH JUICE」は活動歴が長いだけあって、ちょっと大きなお姉さんもいる。既にアイドルの様な風格だ。チビッコたちのダンスも可愛く頬が緩むが、それを見つめるママさんパパさんの顔を見ていてもにっこりしてしまう。

ショーケースの後はBOMBOM先生と一緒にダンスのレクチャー。新旧の人気ダンスをみんなで踊った。みんなひと通り知ってる感じでとても上手。やっぱ習い事ならフラよりラガだろ。それが湘南だよな。まあ湘南はフラもメッチャ盛んな土地柄でもあるんだけど。それにしてもみんな可愛くて、とてもホッコリした気分で今夜のパーティーをスタート出来た。

今回のBUZZでのチビッコ企画をBOMBOMは、制作チームの中の唯一の女性メンバーとして、春先の段階から熱心に進めて来たのを僕は知っている。自らや大人のダンサーのショーではなく、子供達のダンス・ショーとして、だ。この子達がずっと楽しんでいけるシーンを続けて行けば湘南レゲエの未来は明るい。

BATTY BOMBOM & DJ RUDY、お疲れ様でした。

急ぎ8LOUNGEに移動した。8LOUNGEは藤沢駅から徒歩2分に立地するお洒落なシティ・ホテル「8HOTEL」の1階部分にあるCAFE & LOUNGEで、ホテルだと言うのに音楽イベントを積極的に受け入れてくれる場所である。

8LOUNGEではハイジとJr.Deeによるアコースティック・ライヴが組まれている。20時までの企画で、子供連れや中高生が安心して楽しめる雰囲気の会場だ。

既に多くの客が来場していて、KING LIFE STARのKOOLIOの和みのセレクションにゆるく身体を揺らしていた。

そして最も湘南を代表するサウンドMURDER ONE。12月からは炭火焼壱番を閉めてキングストンに移住するというイケちゃん。みんなイケちゃんの選曲が大好きなのだ。壱番常連のお姉様方を中心に大いに盛り上がる。

BUZZでの本番を終えたキッズ・ダンサーズも続々来店してきた。みんな緊張の解けた「やり切った」という充実した顔をしている。

ゆったりとしたペースで活動を続けるハイジのステージ。サポートは湘南レゲエ・シーンのアコースティック・ライヴには欠かせないギタリスト竜功。8LOUNGEの雰囲気も相まって、何となく海を感じさせる様な優しいライヴとなった。以前よりも少しハスキーさが増した彼女の声も魅力的だった。

そして朝と夜を繋ぐ人。海とクラブを繋げる人。サーフィンとレゲエを結ぶ人。Jr.Deeのライヴだ。

Jr.Deeのアコースティック・ライヴは小さい子供から我々ベテラン・レゲエ人までもを楽しませてくれる。深夜にDJブースの中からかますラバダブ・マイクのハードコアさとはまだ違うエッセンスが効いているのだ。

お姉様方に変わってチビッコたちが最前線に陣取った。

お約束通り「オーヤガヤガイェイ!」と声を合わせた。天井も高く抜けのいい空間の8LOUNGEでのライヴは素晴らしかった。

8LOUNGEのライヴが終わる頃には他の会場もオープンし始める。お客さんも軽く腹拵えなども出来る時間帯だ。

8HOTELを後にして、みんなが散らばっていく。8LOUNGEで多くの人が作り上げたナイスなバイブスが藤沢の街に拡散していく。レゲエが浸透していく。

夜はこれからだ。

8LOUNGEが少し押して終わったのもあり、既に次のライヴ開始の時刻が迫っていた。次の現場は「超高級居酒屋お大尽」。早くもNANJAMANが登場する。

現着すると既に多くの人出。もう店内に侵入するのは不可能レベルのパンパンな状態だ。

お大尽では平塚のRUDIE STEPPERを中心とした若手が仕切る現場。横須賀OUTLAWのサウンド・システムのハーフ・セットを居酒屋に持ち込んでの爆音スタイルだ。

普段なら絶対突入なんてしない人混みを掻き分け何とか最前線へ到達。何なんだ、この異常な熱気は。演者はもちろんそうなのだが、お客さんが僕らの予想以上にこの湘南LUVの開催を待ち望んでいてくれたことが分かる。求めていたのだ。いや飢えていたのだ。

2018年も2019年も、夜はこうしたブロック・パーティー形式を取った。だが、いずれも昼の部の開催もあり、夜の会場もあと2ヶ所ぐらい多くやっていたのもあり、もうちょっとゆったりやっていたと思う。

それがどうだ。この熱いバイブス。多くの湘南レゲエ・フリークスが湘南LUVの帰還を待ち望んでいてくれた。それが実証されたことを感じた。

店内では曲兄のライヴが佳境を迎えていた。実兄DANDYMANへの感謝のリリックに、ご本人5年振り登場という場面も。ひたむきなSHOW-Gの熱い主張、作品をドロップしたばかりのMYKEYの独自な世界観を垣間見て、いよいよNANJAMANの登場だ。

「夜になっても元気なお兄ちゃんお姉ちゃん、みんなオハヨウ!!」大マッシュ・アップが湧き起こる。

ブワッと空間が歪んだのかと思ったら隣のデブにギューっと押されていた。鮨詰めの店内なのにみんな更に一歩前に押し寄せる。振り返ればガン・フィンガーの森が出来上がっていた。

「エエイ、エイ、エエイ、エイ、エエイッ!」とライヴは続く。

Jr.Deeも登場して更に現場はヒート・アップ。もう少しで時空が捻じ曲がってジャマイカに接続するところだった。と言うのは言い過ぎだが、それぐらい濃密な空間が出来上がっていた。インフルエンザ・ウィルスが飛び交っていても何も不思議はない。いやむしろ飛び交っていたのだろう。

大盛り上がりだったお大尽を脱出し、そろそろTECO7での自分の出番に備えなければ思いつつ、THREE DICEを覗いてみた。

THREE DICEは今夜はHIP HOP専用の会場で、MICRO TACSのFP460の音響で、湘南NO.1 HIP HOP DJ、MISTA SHARの監修の元、ハードな現場が展開されていた。

店内ではDUST BROSのライヴ中だった。僕は初見だったが、上手いし、熱い、若い。何よりオレたちは心底HIP HOPカルチャーに浸かって生きているんだ、と言う感じが伝わってくる。HIP HOPにしかない雰囲気、世界観。全国的にもその名を轟かす藤沢HIP HOPのレベルの高さ、心意気を見せつけられた思いがした。

湘南LUVという舞台で行われるレゲエとHIP HOPの共演として、この上ない形だと思う。

TECO7に向かいながら、もの凄い客のエナジーを感じながらも、何かみんな前掛かりになり過ぎじゃないかとも思っていた。久々だからしょうがないのか。楽しんでいるのだからそれでいいか。

TOCE7は普段は鉄板焼居酒屋さんである。ここは言うならばサウンド・プレイ寄りの現場、なのだろうか。BRAIN BUSTER 、SKY ACE、ACTIVE SQUAD、JIGGY ROCK、MURDER ONE、そして僕、がブックされている。

そうして到着したTECO7も溢れんばかりの人である。主催が練ったお客さん回遊プログラムが上手くいっているということなのだろう。店内ではACTIVE SQUADがギャンギャンに盛り上げていた。

「やり辛れえー」。次は僕の出番であった。こう見えてもオジサンである。ていうか、まんが日本昔話的にいったらもう立派なオジイサンだ。見た目にもそうだし。最近はもっぱら4つ打ちばっかり掛けてるし。でもまあしゃーない。前掛かりな今夜に少しブレーキをかけよう。ちょっとみんな休憩だ。大人な感じでルーツ・レゲエを少々流させてもらった。多少は喜んでもらえたみたいで良かった。人混みが緩んで呼吸がしやすくなった。

でもJIGGY ROCKと交代したらまたドーっと人が店内のブース前に押し寄せてきた。結局この夜みんなは熱く盛り上がりたいのだ。でもそれは僕の役目ではない。

プレイを終えてTECO7を後にした。そろそろお大尽にて紅谷町ラガマフィン倶楽部のライヴが始まる頃合いだ。

お大尽に到着すると、さっきにも増して多くのお客さんがギューギュー詰めだ。これに再突入は結構厳しい。とにかくひとまず機材の入ったリュックを今夜の宿舎の8HOTELに置いてこよう。じゃないと無理だ。

店から溢れた客も、それはそれで仲間と話し、呑んで、笑って、藤沢の夜を、湘南LUVの夜を楽しんでいる。近所のラーメン屋もどこも混んでいる。多少の経済効果と元気を、レゲエで、藤沢の街に送り込むことが出来ているのではないだろうか。

更にもう一度THREE DICEを覗いてみた。ここにも入れない。店内には入れるのだがブース前までには到底辿り着けない。ゴリゴリのHIPHOPの現場が出来上がっていた。

どこもかしこもパンパンだ。パンパンだ。パンパンだ。パンパンだ。

まだこれからBUZZでは、本気男、導楽、H-MAN、MOOMINらのライヴが控えている。TECO7での松坊栗、BAMIUDAのライヴがある。ジャマイカに旅立つMUDER ONE無鉄砲の、一旦お別れのプレイもある。

夜はまだまだ続くのだ。

湘南LUV2023、見事リベンジなったと思う。いやリベンジではない。実行委員会は途中から「リベンジという文言を使うのはやめよう」ということになったのだった。別に誰かに復讐する訳ではないのだから。

湘南には、神奈川県の海沿いには、素晴らしいレゲエのパーティーを提供する集団がいて、みんなに楽しんでもらっている。バカボンのパパみたいになるが「それでいいのだ」。ここは「湘南LUV2023、大成功を収めた」と表現するのが最適解だろう。

渋を始めとした実行委員会のみんな、お疲れ生でした。


とにかく夏が好きなのだ。どんなに暑くても。

なぜか?海が好きだからだ。レゲエだからだ。文句あるか?

湘南LUV2024はおそらく年明けにでも始動するのだろう。

夏を目指して。

夏にまた会おう。

(文責:茂呂 “Don Moro” 尚浩 / www.dmmg.me)